ジェラール・ディマシオ

2万年後の未来で 1万年前の過去に想いを馳せる幻想世界

「自分が描き出したいのは、未来における過去のイメージ。
たとえば1万年後の未来を、2万年後の人間になったつもりで追想した世界。
その中で、明るい希望と暗い予感の両方を探ってみたい」 ディマシオは自身の作風をこのように表現しています。

美術界に衝撃を与えたディマシオの写実的な未知の世界

フランス幻想絵画の鬼才として活躍するジェラール・ディマシオ(現在はロンドン在住)の作品は1988年に日本で初めて公開されました。

油彩とは思えぬほど細密に描かれた男女裸像や、極めて写実的な未知の世界を描いた大型の絵画は美術界に衝撃を与え、当時日本に多くの熱狂的ファンを生み出しました。

92年から93年にかけて全国8会場を巡回した展覧会では25万人を動員し、日本列島を席巻するフィーバーとなりました。(国内展示では88年~94年にかけて65万人を動員)

check01 ディマシオの作品には破片のようなものが飛んでいるcheck01 ディマシオの作品には破片のようなものが飛んでいる

ディマシオの作品には、ときどき陶器か壁の破片のようなものが飛んでいることがあります。
こうした浮遊物体は作品の構図にバランスと方向性、遠近感を与えており、同時に画面が無重力状態にあることを示しています。

check02 ディマシオの作品には題名がないcheck02 ディマシオの作品には題名がない

また、ディマシオの作品はどれもかなりサイズが大きく、題名がないのも特徴です。
「題名をつけるとその作品を見る人がたちまち現実の世界に引き戻されてしまい、個性と想像力が損なわれてしまう」と、ディマシオは言います。
「芸術作品は、作者が幻想で見たひとつの世界の記憶である」
とあるように、作品は、彼自身の幻想であり、ディマシオは自分が想像した過去の、
あるいは何万年も先の未来世界を見てそれを記憶にとどめ、現代を生きる私達に彼の見た世界を見せてくれるのです。

check03 ディマシオの描く眼は眼球がないcheck03 ディマシオの描く眼は眼球がない

ディマシオの描く眼は、真っ黒で眼球がありません。しかしそれは眼差しを
もっていて、眼ぶたや眉弓や、目の周囲のしわによって表情が与えられています。
そしてこの眼は、われわれの記憶に訴えかけようとしているようにも思えます。

check04 描かれる人間は裸で角のようなものが飛び出ているcheck04 描かれる人間は裸で角のようなものが飛び出ている

神秘に包まれた、見知らぬ世界の住人、いわば、突然に変異した人々がいる。
その人々は服もなく、角が生えているかもしれない・・
ディマシオは2万年後の幻想世界を描いています。

パリで教授として研究の日々を送りながら絵画を制作していたディマシオは、79年にパリの画廊ギャルリ・ラーで初めての個展を開きました。美術誌などを通し次第に注目を集め、85年には「ダリの夢が実現された」と絶賛されます。

身を削り自我を追い込み苦しんで作品を生み出す精神が当たり前とされていた、それまでの芸術家のライフスタイルとは対照的に、ディマシオは日々の生活を規則的に保ち、テニスをし、バランスの取れた食事、そして十分な睡眠時間を取り制作リズムを作るという画家には珍しいスタイルを取ります。モーツァルトやヘンデルを聴きながら描かれた作品は3000点を超えると言われています。

解剖学や建築学も学んだという優れた芸術性と洗練された高度の技法は、レオナルド・ダ・ヴィンチらルネサンスの巨匠の描き方を深く研究して編み出されました。

美しさと邪悪さが同居するディマシオの画面は、低俗で乱雑な現代社会の写し絵とも言われています。

ジェラール・ディマシオジェラール・ディマシオ